固定残業代込みで最低賃金を下回っていないか——「時給換算」の正しい計算方法
2025-11-20
5秒でわかる結論
最低賃金との比較は、固定残業代・通勤手当などを除いた基本部分で行います(最低賃金法4条3項・同法施行規則1条)。「月給25万円・固定残業60時間込み」は時給換算すると最低賃金割れのことも。自分で確認できる計算手順を解説。
「月給25万円なら低くないだろう」——しかし60時間分の固定残業代が含まれていると、時給換算で最低賃金を下回っている例が実務上少なくありません。
最低賃金との比較方法
最低賃金と比較するのは月給の総額ではありません。①残業代(固定残業代を含む)②通勤手当③家族手当④臨時の賃金・賞与を除いた部分(最低賃金法4条3項・施行規則1条)を月所定労働時間で割った時給で比較します。
計算例
- 月給25万円(固定残業代7万円・通勤手当1万円を含む)、月所定160時間。
- 比較対象=25万−7万−1万=17万円 → 17万÷160時間=時給1,062円。
- 地域の最低賃金がこれを上回れば最低賃金法違反——不足部分の合意は無効となり、最低賃金額に自動的に置き換わります(最低賃金法4条2項)。会社は差額の支払義務を負い、罰金(4条1項違反・50万円以下)の対象にもなります。
連鎖する問題
基本給部分が最低賃金を下回る場合、通常は固定残業代の設計自体が過大です。判例上、固定残業代が有効となる前提は「通常の賃金部分と残業代部分の明確区分」(最二小判平成29年7月7日労判1168号49頁〔医療法人康心会事件〕等)——基本給を最低賃金以下に圧縮して残業代を盛る設計は、訴訟で固定残業代条項全体が否定され、総額ベースで残業代を計算し直されるリスクが高いものです。
従業員へ・経営者へ
- 従業員:労働条件通知書を出して、上記の手順で一度計算してみてください。最低賃金を下回っていれば労働基準監督署に申告できます(匿名可)。
- 経営者:毎年10月の最低賃金改定時にチェックすべきは月給総額ではなく控除後の基本部分です。固定残業代の時間数は45時間以内(36協定の原則上限)に抑え、基本給の時給換算に余裕を持たせましょう。
※ 本記事は一般的な法律情報であり、個別の案件に対する法的助言ではありません。実際の案件については必ず弁護士にご相談ください。本記事の内容は記事作成日(2025-11-20)時点の法令・判例に基づくものであり、その後の法改正等により変わることがあります。