「歩合給に残業代込み」は通用しない——歩合制・出来高払いの残業代
タクシー・運送業・営業職に多い歩合給。「残業代込み」は高知県観光事件(最判平6.6.13)で否定。歩合部分にも0.25倍の割増が必要(労基則19条1項6号)。計算方法と会社の対策。
「ドライバーの給料は歩合だから残業代は込み」——運送業・営業職の経営者がよく口にする理解ですが、日本法では歩合給にも別途残業代が必要で、「込み」の約定はほぼ否定されます。
最高裁——歩合部分にも割増賃金
高知県観光事件(最二小判平成6年6月13日労働判例653号12頁)は、タクシー運転手の完全歩合給について「残業代込み」との主張を退けました。歩合給のうちどの部分が通常の労働時間の対価でどの部分が割増賃金かを判別できない以上、支払済みとは認められない——固定残業代と同じ「判別可能性」の法理です。
歩合給の残業代の計算方法
歩合給の時間単価は「その月の歩合給総額÷その月の総労働時間」で算出し、残業時間についてはこの単価の0.25倍を支払います(労基則19条1項6号)。1.0倍部分は歩合給自体で支払済みという整理のため、1.25倍ではなく0.25倍です。分母が総労働時間なので単価は長時間労働ほど下がりますが、0.25倍部分がゼロになることはありません。
「控除で相殺」する設計も否定
割増賃金を支払う分だけ歩合給から差し引く賃金体系について、熊本総合運輸事件(最二小判令和5年3月10日労働判例1284号5頁)は、名目上の区分があっても実質的に通常の対価と割増部分を判別できない制度では割増賃金の支払があったとはいえないとしました。
実務の対策
- 歩合制でも労働時間の記録は必須(計算の前提)。
- 毎月、労基則の算式で0.25倍部分を計算し、給与明細に独立の項目として記載する。
- 「歩合に込み」「別名目で控除」は時効3年分がまとめて顕在化する時限爆弾です。
※ 本記事は一般的な法律情報であり、個別の案件に対する法的助言ではありません。実際の案件については必ず弁護士にご相談ください。本記事の内容は記事作成日(2026-09-13)時点の法令・判例に基づくものであり、その後の法改正等により変わることがあります。