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「古い記録はもうない」は会社を救わない——賃金台帳・出勤記録の保存義務(労基法109条)

2025-06-23

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5秒でわかる結論

賃金台帳の調製(労基法108条)と記録の5年保存(当分の間3年・109条)は会社の義務。「古い記録は廃棄した」は残業代訴訟で免罪符にならず、労働者側の手帳・メール等による推計認定を招き、不明確な部分は会社に不利に扱われがち。保存年限の統一・電子化・開示請求への対応方針まで、会社側の整備ポイントを解説。

退職者から過去の残業代を請求され「そんなに前のタイムカードはもう残っていない」と回答する——この言い分は法的に会社を救わず、むしろ不利な材料になり得ます。

会社の調製・保存義務

加えて、安衛法上の労働時間の状況の記録も3年保存です(安衛則52条の7の3第2項)。賃金請求権の消滅時効は5年(当分の間3年。労基法115条・143条3項)で、保存期間は時効と連動した設計——時効が完成していない期間の記録は、あって当然とされます。

「記録がない」はむしろ会社に不利

残業代訴訟で労働時間の立証責任は原則労働者側にありますが、会社には上記の調製・保存義務と客観的把握義務(安衛法66条の8の3)があります。裁判例は、会社が記録を保存・提出しない場合、労働者側の手帳・メール送信記録・交通系ICカード・家族へのメッセージ等から概括的・推計的に認定し、不明確な部分を会社に不利に扱う例が少なくありません。「廃棄した」は免罪符にならず、時間認定の主導権を相手に渡すだけです。

開示請求・文書提出命令

退職者から内容証明で賃金台帳・出勤記録の開示を請求された場合、拒否の実益は乏しいものです:訴訟では文書提出命令の申立て(民事訴訟法219条以下)が可能で、正当な理由なく提出しなければ裁判所は相手の主張を真実と認めることができます(224条)。賃金台帳の未調製・虚偽記載(残業時間を故意に記入しない等)自体が違法であり(120条)、労基署への申告・是正勧告の対象にもなります。

会社が整備すべき体制

  1. 保存年限の統一:労務関係書類は一律5年保存へ(時効の完全5年化を見据えた対応)。廃棄規程が「3年で廃棄」のままなら今すぐ改定を。
  2. 電子化:打刻データ・賃金台帳を検索可能な形で電子保存。退職者分も例外にしない。
  3. 台帳記載の完全性:労働時間数・時間外時間数の欄が空白や全部「0」の台帳は、調査でも訴訟でも減点材料です。
  4. 請求が来たらまず評価:開示請求の段階で弁護士に、時効完成の範囲・固定残業代・管理監督者該当性等の争点を検証させ、請求額を予測したうえで対応方針を決めます。

※ 本記事は一般的な法律情報であり、個別の案件に対する法的助言ではありません。実際の案件については必ず弁護士にご相談ください。本記事の内容は記事作成日(2025-06-23)時点の法令・判例に基づくものであり、その後の法改正等により変わることがあります。

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