着替え・朝礼・掃除の時間は労働時間か——最高裁の「指揮命令下」基準
2025-08-26
5秒でわかる結論
会社が義務づけた着替え・朝礼・掃除の時間は労働時間——三菱重工長崎造船所事件(最一小判平12.3.9民集54巻3号801頁)の「指揮命令下」基準。就業規則の定め方では左右されません。毎日15分でも3年分は大きい。
「始業は9時だから、8時50分に来て制服に着替え、朝礼に出るのは従業員側の問題」——そう考える会社は少なくありません。しかし日本法では、労働時間かどうかはタイムカードの打刻ではなく、使用者の指揮命令下に置かれているかで決まります。
最高裁の基準——三菱重工長崎造船所事件
三菱重工長崎造船所事件(最一小判平成12年3月9日民集54巻3号801頁)は、労働時間とは労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間をいい、該当するかは客観的に定まるのであって、就業規則の定め方では左右されないと判示しました。
同事件では、作業服・保護具の装着を義務づけ、更衣を事業所内の所定の場所で行わせていた以上、その時間は労働時間に当たるとされています。
具体的な当てはめ
- 着替え:制服着用を義務づけ、かつ社内での更衣を指定→労働時間。推奨にとどまる、自宅で着てきてよい→原則該当しない。
- 朝礼:事実上参加が強制(不参加が注意・査定に影響)→労働時間。
- 始業前の掃除・機械点検:会社が義務づけていれば労働時間。
- 終業後の後片付け・洗浄:同様です。
毎日10分でも3年分は大きい
始業前15分+終業後10分で年間約100時間。時給1,500円・割増25%なら1人年間約19万円、時効3年分で約56万円——従業員10人なら500万円超です。
会社側の対策
- 義務づけている始業前・終業後の行為を洗い出し、労働時間として管理に組み込む。
- 打刻位置と更衣の順序を見直す(打刻→更衣の順にする)。
- 朝礼は所定労働時間内に組み込むか、真に自由参加とするかを明確にする。
※ 本記事は一般的な法律情報であり、個別の案件に対する法的助言ではありません。実際の案件については必ず弁護士にご相談ください。本記事の内容は記事作成日(2025-08-26)時点の法令・判例に基づくものであり、その後の法改正等により変わることがあります。