健康診断を拒否する従業員への対応——受診義務と受診命令
2025-07-18
5秒でわかる結論
健康診断は会社の実施義務+労働者の受診義務(安衛法66条)。費用は会社負担。拒否する従業員への受診命令は有効(電電公社帯広局事件・最判昭61.3.13)。
「健康は個人のプライバシーだ」と会社の健康診断を拒む従業員——日本では、健康診断は福利厚生ではなく法律上の義務であり、労使双方の義務です。
会社の義務・労働者の義務
- 会社は雇入時健診と年1回の定期健診を実施する義務を負います(労働安全衛生法66条1項、安衛則43条・44条)。深夜業等の特定業務従事者は6か月に1回。
- 労働者にも受診義務があります(安衛法66条5項)。ただし会社指定医でなく他の医師の健診を受け、結果証明書を提出することは可能です(同項ただし書)。
- 費用は会社負担。実施義務違反には罰則があります(同法120条1号)。
- パート・アルバイトも、1年以上の雇用見込みで週労働時間が通常の労働者の4分の3以上なら対象です。
受診を拒む従業員——受診命令は可能か
電電公社帯広局事件(最一小判昭和61年3月13日労働判例470号6頁)は、健康状態に問題のある職員への精密検診の受診命令について、就業規則・健康管理規程に合理的な根拠がある場合には受診命令は有効であり、拒否は懲戒事由になり得るとしました。
実務の順序は、①法定義務と目的の説明→②医師選択の自由(66条5項ただし書)の提示→③書面による受診命令→④なお拒否する場合に、けん責・戒告等の軽い処分から検討、です。いきなり重い処分は過重と判断されます。
健診の後が本番
異常所見があれば医師の意見を聴き(66条の4)、必要に応じて労働時間の短縮・作業転換等の就業上の措置を講じます(66条の5)。健診結果を放置すると、脳・心臓疾患が発生したときに安全配慮義務違反の証拠になります。
※ 本記事は一般的な法律情報であり、個別の案件に対する法的助言ではありません。実際の案件については必ず弁護士にご相談ください。本記事の内容は記事作成日(2025-07-18)時点の法令・判例に基づくものであり、その後の法改正等により変わることがあります。