「主治医がもう働けると言っている」——復職判断は診断書1枚で決めてはいけない
2026-10-16
5秒でわかる結論
うつ病休職者が主治医の「復職可」診断書を持ってきた。片山組事件(最一小判平成10年4月9日労判736号15頁)の基準、会社指定医の受診命令、リハビリ出勤——復職判断の実務。
うつ病で休職中の従業員が、主治医の「復職可」の診断書を持ってきた。しかし会社から見ればまだ不安定——復職を拒めるのか。人事実務で最も難しい場面の一つです。
休職期間満了=退職という制度
多くの会社の就業規則には私傷病休職制度(解雇猶予の仕組み)があり、期間満了までに復職できなければ自然退職または解雇となります。復職可否の判断はその従業員の身分を直接左右するため、判断を誤るとそのまま紛争になります。
最高裁の基準——元の業務だけで判断しない
片山組事件(最判平成10年4月9日労働判例736号15頁)は、直ちに元の業務に就けなくても、より軽易な業務に就くことができ、現実にその配置可能性がある場合には、労務提供不能と直ちには扱えないとしました。復職判断には配置可能性を検討するプロセスが求められます。
主治医の診断書への向き合い方
- 会社指定医(産業医等)の受診命令:就業規則に定めがなくても、合理的・相当な理由があれば受診命令を認めた裁判例があります(京セラ事件・東京高判昭和61年11月13日労働判例487号66頁等)。
- 主治医への情報照会(本人同意のうえ):業務内容をどこまで前提にした「復職可」かを確認。
- リハビリ出勤・試し勤務の設計で安定性を観察。
実務のポイント
- 復職基準(通常勤務が可能な程度)を就業規則に明記する。
- 面談記録・医師意見・配置検討の経過を記録化する。
- 無理に復職させて再悪化させるのが双方にとって最悪。丁寧な手続こそが会社の防御です。
※ 本記事は一般的な法律情報であり、個別の案件に対する法的助言ではありません。実際の案件については必ず弁護士にご相談ください。本記事の内容は記事作成日(2026-10-16)時点の法令・判例に基づくものであり、その後の法改正等により変わることがあります。