定年制度の設計——60歳未満禁止・65歳雇用確保義務・70歳努力義務の三層構造
2026-04-29
5秒でわかる結論
定年制度の設計を解説。60歳未満の定年禁止(高年法8条)、65歳までの雇用確保義務(9条・2025年4月から経過措置終了で完全適用)、70歳までの努力義務、再雇用の待遇設計と長澤運輸事件(最二小判平30.6.1民集72巻2号202頁)、無期転換の特例(第二種計画認定)まで。
「うちの定年は55歳」——違法です。「定年60歳、その後は使いたい人だけ使う」——これも違法です。定年制度には三層の法定構造があります。
三層構造(高年齢者雇用安定法)
- 8条:定年は60歳を下回れない(60歳未満の定年の定めは無効)。
- 9条:定年65歳未満の会社は、65歳までの雇用確保措置が義務——①定年廃止②定年の65歳への引上げ③継続雇用制度(再雇用・勤務延長)の三択。希望者全員が対象です(2013年改正の経過措置は2025年3月末で終了し、2025年4月から完全適用)。
- 10条の2(2021年4月〜):70歳までの就業確保の努力義務(定年引上げ・継続雇用・業務委託・社会貢献事業などの選択肢)。
実務の多数派:60歳定年+65歳までの再雇用
- 定年退職→1年更新の有期再雇用契約が典型です。職務・労働時間・賃金は再設計できます。
- ただし待遇差には限界があります。長澤運輸事件(最二小判平成30年6月1日民集72巻2号202頁)は、定年後再雇用の運転手の待遇差を各手当の性質・目的ごとに個別判断し、精勤手当の不支給は不合理、基本給・賞与の差は退職金支給・年金等を考慮して許容しました。「定年後だから全部半減」式の乱暴な設計には敗訴リスクがあります。
- 再雇用で提示する職務が定年前と著しく異なる・屈辱的な場合(事務職→清掃など)を違法とした裁判例もあります——職務に連続性を持たせること。
設計チェックリスト
- 就業規則の定年条項(60歳以上)+継続雇用規程の整備。
- 再雇用の労働条件ひな形(職務・時間・賃金表)と個別契約書。
- 無期転換の特例:継続雇用の高齢者は都道府県労働局の認定(第二種計画)を受ければ定年後の期間に無期転換申込権が発生しません——使うなら先に申請を。
- 70歳までの措置の検討(努力義務ですが採用力・助成金で有利)。
※ 本記事は一般的な法律情報であり、個別の案件に対する法的助言ではありません。実際の案件については必ず弁護士にご相談ください。本記事の内容は記事作成日(2026-04-29)時点の法令・判例に基づくものであり、その後の法改正等により変わることがあります。