定年後再雇用でどこまで賃金を下げられるか——長澤運輸事件
2026-08-20
5秒でわかる結論
定年後再雇用の賃下げ自体は許容されるが、手当ごとに不合理性を個別検討(長澤運輸事件・最判平30.6.1)。精勤手当の差は違法とされた。制度設計のポイント。
高年齢者雇用安定法は、65歳までの雇用確保措置(定年引上げ・継続雇用制度・定年廃止のいずれか)を義務付けています(同法9条)。実務で最も多いのが60歳定年+嘱託再雇用——そして紛争になるのが「再雇用後の賃金をどこまで下げられるか」です。
長澤運輸事件——手当ごとの個別検討
長澤運輸事件(最二小判平成30年6月1日民集72巻2号202頁)は、定年後嘱託のトラック運転手の職務内容が定年前と全く同一のまま年収が約2割下がった事案です。最高裁の判断:
- 「定年後再雇用である」こと自体は、待遇差の不合理性判断で考慮できる事情の一つ(年金・退職金の存在が背景)。
- ただし全体の包括比較ではなく手当ごとの個別検討が必要。同事件では精勤手当の不支給が不合理で違法とされました——皆勤の奨励という趣旨は定年前後で変わらないからです。
- 基本給・賞与の減額は、同事件の事情の下では不合理とされませんでした。
制度設計のポイント
- 減額には説明のつく構造を:職務内容・責任・配置変更範囲を変える(管理職責任を外す、業務を限定する等)ことで減額の説得力が高まります。「仕事は同じで賃金半減」はハイリスク。
- 手当を1つずつ点検:勤務実績に直接連動する手当(精勤・作業手当等)の差は最も攻撃されやすい。
- 再雇用条件は定年前に十分協議し書面化する。提示条件が苛酷で実質的に再雇用機会を奪うものは別途違法リスクがあります。
- 2025年4月に高年法の経過措置が終了し、継続雇用制度は希望者全員が対象です。古い制度のままなら更新が必要です。
※ 本記事は一般的な法律情報であり、個別の案件に対する法的助言ではありません。実際の案件については必ず弁護士にご相談ください。本記事の内容は記事作成日(2026-08-20)時点の法令・判例に基づくものであり、その後の法改正等により変わることがあります。