「上司にパワハラされた」と申告が来たら——会社がやるべき5ステップ
2025-07-24
5秒でわかる結論
社内でパワハラの訴えがあったとき、会社が踏むべき5つのステップ。中立的な調査手続こそが、会社の最良の防御です。
社員から「上司にパワハラされている」と申告があったとき、会社の初動が、のちに裁判所に守られるか賠償を命じられるかを分けます。日本では、パワハラ防止の措置はすべての事業主の法的義務です(労働施策総合推進法30条の2)。
- 傾聴:申告を真剣に聴き、放置しない。放置=措置義務違反です。聴取は2名で対応し、日時と内容を記録。本人に「会社にどう対応してほしいか」も確認します(席替えだけを望み、大ごとにしたくない人もいます)。
- 調査:中立的なヒアリング。順序は「申告者→目撃者等の第三者→行為者」が基本。行為者は最後に、具体的事実を揃えてから確認します。各ヒアリングは記録化し、本人に内容を確認してもらう。重大案件(役員が関与、解雇があり得る等)は外部弁護士への調査委託を検討。
- 認定:証拠に基づき冷静に事実認定。言い分が対立するときは客観証拠(メール・チャット・録音・第三者証言)で判断。一方の話だけで結論を出さない。
- 処置:事実が認定できれば懲戒処分や席・業務の調整。処分の重さは事実と均衡させる——重すぎると行為者から訴えられます。認定できない場合は申告者に調査経過と結論を説明。グレーな場合も「処分はしないが引き離し・注意喚起」という柔軟な対応が可能です。
- 再発防止:申告者への報復の禁止。申告を理由とする不利益取扱い(降格・左遷・考課減点)は法律で明文禁止されています。調査に協力した同僚への不利益取扱いも同様です。しばらく経ってから、状況が改善したか申告者にフォローを。
よくある失敗は2つ。「放置」(それ自体が義務違反)と「拙速な処分」(一方の話だけで処分し、行為者から訴えられる)です。外国籍社員への国籍嘲笑の事件では、外部弁護士の中立調査と報告書に基づく懲戒が裁判所に支持されました。中立的な調査手続こそが、会社の最善の防御です。
平時に準備しておく3つのこと
- 相談窓口の設置:それ自体が法律の求める措置の一つ。小規模な会社は総務担当者+外部窓口(弁護士・社労士)の組み合わせでも可。
- 就業規則にハラスメント禁止条項と懲戒事由を定める:定めがなければ、事実が認定できても処分できません。
- 管理職研修:行為者の大半は管理職です。「指導」と「パワハラ」の線引きを教えることが、最も安上がりな予防です。
※ 本記事は一般的な法律情報であり、個別の案件に対する法的助言ではありません。実際の案件については必ず弁護士にご相談ください。本記事の内容は記事作成日(2025-07-24)時点の法令・判例に基づくものであり、その後の法改正等により変わることがあります。