中小企業にも義務——パワハラ「相談窓口」の設置義務と敗訴リスク
2026-08-14
5秒でわかる結論
パワハラ相談窓口の設置は中小企業含む全事業主の法的義務(労働施策総合推進法30条の2)。相談放置で会社の責任が認められた裁判例と窓口設計。
「うちは小さい会社だから、パワハラ対策は大企業の話」——違います。日本のパワハラ防止措置義務は、2022年4月から中小企業を含むすべての事業主に適用されています(労働施策総合推進法30条の2)。そして、やらなかった代償は行政指導にとどまりません。
法律が事業主に求めること
- ①方針の明確化と周知:パワハラを許さない旨の宣言、懲戒方針の就業規則への明記、研修による教育。
- ②相談体制の整備:相談窓口をあらかじめ定めて周知し、実際に機能させること——現実に発生した案件だけでなく、「発生のおそれ」「該当するか微妙」な相談にも広く対応します。
- ③事後の迅速・適切な対応:迅速な事実確認、被害者への配慮措置、行為者への処分、再発防止。
- ④プライバシー保護と不利益取扱いの禁止:相談者のプライバシーを守り、相談したことを理由とする不利益取扱いをしないこと。
放置の代償:さいたま市事件
裁判例
さいたま市事件(東京高判平成29年10月26日労判1172号26頁):職場のハラスメントについて従業員が相談したのに、使用者側が適切な対応をとりませんでした。裁判所は、良好な職場環境で就労させる職場環境調整義務への違反を認め、賠償を命じました。
重要なのは:敗訴の原因はハラスメント行為そのものより「相談を受けた後の不作為」であることが多いという点です。窓口が形だけ・受け付けたのに放置、が最も典型的な敗訴パターンです。
中小企業でもできる窓口設計
- 窓口担当者を指名し(男女複数が望ましい)、連絡方法を従業員に周知する。
- 受付方法を複線化:面談のほかメール・電話も可。匿名相談も受け付ける。
- 担当者の守秘義務と、相談による不利益取扱いがないことを従業員に明示する。
- 人手が足りなければ、外部(法律事務所等)への窓口委託も可能。
相談が来たら
①傾聴と記録 → ②迅速な事実調査(双方+第三者からの聴取)→ ③認定と処分 → ④被害者のフォローと再発防止。調査の中立性・記録化が、後日の紛争に対する最大の防御です。
※ 本記事は一般的な法律情報であり、個別の案件に対する法的助言ではありません。実際の案件については必ず弁護士にご相談ください。本記事の内容は記事作成日(2026-08-14)時点の法令・判例に基づくものであり、その後の法改正等により変わることがあります。