妊娠中、立ちっぱなしの仕事がつらい——軽易業務への転換を請求する権利
2026-02-28
5秒でわかる結論
妊娠中の軽易業務転換請求権(労基法65条3項)を解説。転換を契機とする降格が原則違法とされた広島中央保健生協(マタハラ)最高裁判決、母性健康管理措置まで。
妊娠後も売場で立ち仕事・荷物運び・長時間勤務——日本法は妊娠中の労働者に「請求すれば使える」権利を一式用意しています。重要なのは、請求しなければ自動的には発生しないことです。
軽易業務への転換(労基法65条3項)
- 妊娠中の女性が請求したときは、会社は他の軽易な業務に転換させなければなりません。医師の診断書は法律上の要件ではありません(母健連絡カードがあると円滑です)。
- 行政解釈では、会社に軽易業務を新設する義務まではありません——しかし既存業務内の調整(立ち→座り・重量物→軽作業・外勤→内勤)への対応は必要で、全面拒否・放置は均等法13条の母性健康管理措置義務違反が重なります。
- 転換後の賃金:同額の保障はありませんが、妊娠・転換請求を理由とする減給・降格は均等法9条3項が禁止する不利益取扱いです。広島中央保健生協事件(最一小判平26.10.23民集68巻8号1270頁):妊娠中の軽易業務転換を契機とする降格は、本人の自由な意思による承諾等がない限り原則違法とされました。
妊産婦のその他の請求権
- 時間外・休日・深夜労働の免除(66条2項・3項):妊産婦(妊娠中+産後1年)が請求すれば、残業・深夜労働をさせられません。
- 変形労働時間制の制限(66条1項):請求すれば、1日8時間・週40時間を超える労働は不可になります。
- 通院時間の確保(均等法12条):妊婦健診の時間を与えなければなりません(妊娠23週までは4週に1回など)。
- 母健連絡カード(均等法13条):医師の指示(通勤緩和・休憩・休業など)を記載して提出すれば、会社は相応の措置を講じる義務を負います——「医者に休めと言われた」と口頭で伝えても動かない会社への書面の武器です。
不利益に扱われたら
妊娠・請求を理由とする解雇・雇止め・降格・減給は均等法9条3項違反(マタハラ)です。妊娠中+産後1年以内の解雇は、会社が妊娠以外の理由を証明できなければ無効です(9条4項)。都道府県労働局雇用環境・均等部の相談・調停(無料)が利用できます。
※ 本記事は一般的な法律情報であり、個別の案件に対する法的助言ではありません。実際の案件については必ず弁護士にご相談ください。本記事の内容は記事作成日(2026-02-28)時点の法令・判例に基づくものであり、その後の法改正等により変わることがあります。