「雇用保険に入れていなかった」が発覚したら——会社のリスクと遡及加入の実務
雇用保険の未加入は従業員の退職後も消えない——元従業員はいつでもハローワークに資格確認を請求でき(雇用保険法8条)、原則2年・保険料を天引きしていた場合は2年超の遡及加入と追納に。外国人雇用状況届出の未届出も連鎖。発覚時の是正ステップと2028年10月の週10時間への拡大まで、会社側の実務を解説。
「アルバイトは入れなくていい」「試用期間中はまだ」——そのような雇用保険の取扱いは、想像以上のリスクを抱えています。離職後の元従業員も、いつでもハローワークに資格確認を請求できるため、未加入問題は退職で消えません。発覚すれば、遡及加入・保険料の追納・行政指導の三重負担になります。
誰が強制加入か
加入は会社の裁量ではなく法律上の義務です。要件は:
- 週所定労働時間20時間以上
- 31日以上の雇用見込み
該当すれば強制被保険者です——アルバイト・パート・派遣・外国人も同じ(昼間学生は原則適用除外・雇用保険法6条4号)。※2028年10月から加入下限は週10時間以上に拡大予定(2024年改正法)であり、対象者が大幅に増える前に棚卸しをしておくべきです。
従業員(離職者含む)には確認請求権がある
労働者は(離職後でも)いつでもハローワークに被保険者資格の確認を請求でき(雇用保険法8条)、職権確認もあります(9条)。会社が非協力でも、ハローワークは賃金台帳・出勤簿・雇用契約書等を調査して進めます。
遡及の範囲と会社の負担
- 原則:2年の遡及加入。会社はその期間の保険料(労使双方負担分)を追納します。
- 特例:2年超——給与明細等で雇用保険料が賃金から控除されていたことが確認できる場合、最も古い控除確認日まで遡及します(2010年改正)。天引きしながら手続をしていなかったケースは最悪の型で、遡及範囲が広がるうえ悪質と評価されます。
連鎖する他の問題
- 外国人雇用状況届出:雇用保険の資格取得届は外国人雇用状況届出(労働施策総合推進法28条)を兼ねており、未加入=未届出。届出義務違反には30万円以下の罰金があります。
- 健康保険・厚生年金:適用事業所の未加入は年金事務所から原則2年の遡及徴収を受けます。
- 労災保険:手続未了でも従業員への給付は行われますが、政府が会社から費用徴収します(故意・重過失の場合は給付額の全部または一部)。
- 確認請求をした従業員への報復的な取扱い(解雇等)は別途違法であり、問題を大きくするだけです。
発覚時の是正ステップ
- 全員の棚卸し:週20時間・31日基準で在籍者全員(アルバイト・パート・外国人含む)を再チェック。
- 自主的な届出:ハローワークへ遡及の資格取得手続を自ら行う——申告・調査で指摘されてから動くより、処理も心証も良くなります。
- 今後のフローの整備:入社手続のチェックリストに「雇用保険該当性の判定」を組み込み、労働時間が増えた場合の再判定も仕組み化。
- すでに確認請求が出ている場合は調査に協力しつつ、他の従業員分の是正も同時に済ませます。
※ 本記事は一般的な法律情報であり、個別の案件に対する法的助言ではありません。実際の案件については必ず弁護士にご相談ください。本記事の内容は記事作成日(2025-09-26)時点の法令・判例に基づくものであり、その後の法改正等により変わることがあります。