日々の残業の「15分未満切捨て」は違法——賃金計算の端数処理、適法と違法の線引き
2025-05-19
5秒でわかる結論
賃金計算の端数処理のルール(昭63.3.14基発150号)を解説。1か月の残業時間合計の30分未満切捨て・30分以上切上げは適法だが日々の切捨ては違法、割増賃金の円未満四捨五入、1分単位の労働時間把握が原則であることまで。
「退勤打刻18:07。残業は15分単位だから7分は切捨て」——毎日削られる数分は年間で数千円〜数万円になります。この処理は原則違法です。
原則:1分単位で計算
全額払原則(労基法24条1項)の下、労働時間に対応する賃金は全額支払う必要があります。日々の労働時間の切捨て(15分未満切捨て・30分単位等)は切捨て部分の賃金不払であり違法です(120条・罰金)。労働時間は原則1分単位で把握・計算します。
例外:通達が認める端数処理(限定列挙)
事務簡便の目的で、次の処理は24条違反にならないとされています(昭和63年3月14日基発150号):
- ①1か月の時間外・休日・深夜労働の各合計の30分未満→切捨て、30分以上→1時間に切上げ。※1か月の合計についてのみ可で、日々の切捨ては不可。
- ②1時間当たりの賃金額・割増賃金額の50銭未満→切捨て、50銭以上1円未満→1円に切上げ。
- ③1か月の賃金支払額の100円未満の四捨五入、1,000円未満の翌月繰越し(就業規則の定めが必要)。
これ以外の切捨て(日単位・一律15分控除等)はすべて違法です。
よくある違法パターン
- 「残業申請は30分単位」→30分未満の実労働分の不払(違法)
- 「始業前の朝礼10分はノーカウント」→参加義務があれば労働時間
- 「打刻後の待機は切捨て」→指揮命令下なら労働時間
- 「15分の遅刻で30分控除」→実際の不就労分を超える控除は24条違反(制裁として行うなら労基法91条の減給制限の範囲内のみ)
削られた分を取り戻す
- 証拠:打刻記録・パソコンのログ・給与明細(計算方法の突合)。会社には記録保存義務(109条)と客観的把握義務(安衛法66条の8の3)があります。
- 計算:実労働時間(1分単位)×単価×割増率−既払額。時効は5年(当分の間3年。労基法115条・143条3項)。
- 請求:内容証明→労基署申告(切捨て運用自体が違法事実)→労働審判・訴訟。付加金(労基法114条)の請求も検討します。
※ 本記事は一般的な法律情報であり、個別の案件に対する法的助言ではありません。実際の案件については必ず弁護士にご相談ください。本記事の内容は記事作成日(2025-05-19)時点の法令・判例に基づくものであり、その後の法改正等により変わることがあります。