転職先から「退職証明書」を求められた——会社には交付義務がある(労基法22条)、しかも勝手なことは書けない
退職証明書の交付義務(労基法22条)を解説。記載事項は請求したものに限る(3項)、ブラックリストの禁止(4項)、解雇予告期間中の解雇理由証明書による理由の固定、入管手続での活用まで。
転職活動で退職証明書の提出を求められたのに、前の会社が出してくれない、あるいは頼んでいない「懲戒解雇」の文字を書かれた——法律はどう定めているでしょうか。
会社の交付義務(労基法22条1項)
労働者が退職に際して次の事項の証明書を請求したときは、会社は遅滞なく交付しなければなりません。
- 使用期間
- 業務の種類
- その事業における地位
- 賃金
- 退職の事由(解雇の場合はその理由を含む)
違反には30万円以下の罰金があります(120条1号)。離職票は雇用保険の書類であり、退職証明書は労基法上の別の権利です。請求権の時効は退職後2年(115条)。
最重要ルール:請求した事項しか書けない
労基法22条3項により、証明書には労働者が請求しない事項を記入してはなりません。「使用期間と業務の種類」だけ請求すれば、会社が勝手に退職事由(例えば懲戒解雇)を書くことはできません。転職先に退職の経緯を知られたくない場合は、必要最小限の事項だけ請求しましょう。
22条4項は、第三者と謀り、国籍・信条・社会的身分・組合活動について秘密の記号を付す等して就業を妨げること(いわゆるブラックリスト)を禁じています。
解雇理由証明書(22条2項)
解雇予告を受けた労働者は、予告日から退職日までの間にも解雇理由の証明書を請求できます。解雇を争うならこれが第一歩——会社の主張する解雇理由を固定し、事後の追加・変更を防ぎます(訴訟で当初書かなかった理由を追加すれば、その信用性が疑われます)。
会社が出さないとき
- 書面(特定記録郵便・メール)で記載事項を指定して正式に請求。
- なお交付しなければ労働基準監督署へ申告(104条)。罰則を背景に行政指導は通常有効です。
- 不交付により転職に失敗した等の損害は、理論上賠償請求の対象です。
在留資格の変更・更新でも役立つ
外国人の転職では、入管手続(就労資格証明書の交付申請・在留期間更新)で前職の退職証明書・源泉徴収票を求められることがよくあります。退職時にまとめて請求しておくと、後日前の会社に連絡する手間が省けます。
※ 本記事は一般的な法律情報であり、個別の案件に対する法的助言ではありません。実際の案件については必ず弁護士にご相談ください。本記事の内容は記事作成日(2026-07-23)時点の法令・判例に基づくものであり、その後の法改正等により変わることがあります。