出張の移動時間は労働時間か——新幹線の3時間に賃金は出るのか
2026-02-04
5秒でわかる結論
出張の単純な移動時間は原則労働時間に当たらない——自由利用が保障されているため。ただし物品の運搬・監視、移動中の業務指示、訪問先間の移動は労働時間。出張旅費規程の設計ポイント。
「大阪出張の往復新幹線5時間は残業になるのか」。出張の多い会社では必ず出る質問です。日本の実務の答えは、単純な移動時間は原則として労働時間に当たらない、です。
なぜ原則として当たらないのか
労働時間かどうかは使用者の指揮命令下にあるかで決まります(三菱重工長崎造船所事件・最一小判平成12年3月9日民集54巻3号801頁)。移動中は睡眠も読書も自由で、労務の提供が拘束されていないため、通勤時間と同様に扱うのが行政解釈・多数の裁判例の立場です。
例外——労働時間になる場合
- 物品の運搬・監視を命じられている移動(機材・現金・重要書類の携行)。
- 移動中に業務を指示されている(車内で資料作成・オンライン会議)。
- 随行・引率自体が業務の場合(添乗・随行介助など)。
- 就業時間中の訪問先間の移動(午前A社→午後B社)は業務の一部として労働時間です。
休日の移動はどうする
日曜に移動して月曜に会議という場合も、移動自体は労働時間でないため休日割増は原則発生しません。ただ、丸一日会社のために移動して無給では不満が残るため、多くの会社は出張手当・移動日当で手当てしています。これは法律上の義務ではなく制度設計の問題です。
会社側への提言
- 出張旅費規程に、移動時間の取扱い・出張手当・休日移動の日当を明記する。
- 移動中に業務を命じればその部分は労働時間になるため、指示の出し方に注意する。
- 事業場外みなし労働時間制(労基法38条の2)の活用も選択肢ですが、要件は限定的です。
※ 本記事は一般的な法律情報であり、個別の案件に対する法的助言ではありません。実際の案件については必ず弁護士にご相談ください。本記事の内容は記事作成日(2026-02-04)時点の法令・判例に基づくものであり、その後の法改正等により変わることがあります。