「賞与をいくら出すかは社長の自由」——査定裁量の限界と不支給の違法リスク
2025-06-29
5秒でわかる結論
賞与の有無・金額は原則会社の裁量ですが、就業規則等に支給規定があれば賃金請求権になり、査定の裁量も濫用審査を受けます。育休取得者への不利益な査定は違法です(育児介護休業法10条・東朋学園事件 最一小判平15.12.4労判862号14頁参照)。
「賞与は恩恵だから、出すも出さぬも自由」——半分正しく、半分危険です。境界線はどこにあるのでしょうか。
賞与の法的性質
- 労基法上、賞与は義務ではありません——定めがなければ請求権もありません。
- しかし就業規則・賃金規程・労働契約・求人票に「年2回・基本給○か月分」など具体的基準が書かれていれば、労働条件=賃金請求権が発生します。「業績により支給することがある」という抽象的規定なら裁量は広いままです。
- 支給日在籍条項(別記事参照)・査定制度の建て付けが、紛争の形を決めます。
査定裁量の濫用審査
査定自体は会社の裁量ですが、裁判例は次の場合に違法と認めます:
- 恣意・報復査定:内部通報・労基署申告・違法な指示の拒否の後に査定が急落——人事権の濫用(不法行為・差額請求)です。
- 違法な理由による査定:東朋学園事件(最一小判平成15年12月4日労判862号14頁)は、産休・育休取得日を欠勤扱いして賞与を全額不支給とする規定を公序違反で無効としました。現行法では育休等を理由とする不利益取扱いは明文で禁止(育児介護休業法10条)、妊娠出産理由も同様です(均等法9条3項)。
- 査定過程の逸脱:規程の定める査定手続(評価項目・面談)を全く踏まない減額。
経営者の設計ポイント
- 規程の書き方が自由度を決めます:「会社業績及び本人査定により支給額を決定する。業績によっては支給しないことがある」——裁量を確保する標準文言です。
- 査定は記録を残す:評価表・評価理由。訴訟で「なぜ彼がCなのか」を説明できない査定は、恣意と推認されます。
- 大幅減額(前年比半減以下など)には説明可能な理由を——組合・個別交渉の火種になります。
- 外国人社員:「外国人だから賞与の対象外」という区別は労基法3条(国籍差別の禁止)違反です。
※ 本記事は一般的な法律情報であり、個別の案件に対する法的助言ではありません。実際の案件については必ず弁護士にご相談ください。本記事の内容は記事作成日(2025-06-29)時点の法令・判例に基づくものであり、その後の法改正等により変わることがあります。