会社の飲み会・社員旅行は労働時間か——「事実上の強制参加」が分かれ目
会社の飲み会・社員旅行が労働時間になる基準(指揮命令下・三菱重工長崎造船所事件)を解説。事実上の強制参加・幹事業務は労働時間、行事中の災害が労災になる場合、不参加を理由とする不利益まで。
金曜夜の歓迎会、週末の社員旅行。行きたくないが断れない——この時間は労働時間でしょうか。残業代は?途中のけがは労災?
判断基準:指揮命令下
労働時間とは労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間をいい、客観的に定まり、契約や就業規則の定めに左右されません(三菱重工長崎造船所事件・最一小判平成12年3月9日民集54巻3号801頁)。
飲み会・旅行に当てはめると——
- 純然たる自由参加(不参加でも何の不利益もない)→ 労働時間ではない。
- 事実上の強制 → 労働時間。徴表:出欠管理、欠席に理由を求める・上司面談、査定への反映、新人への司会・酌などの「業務」の割当て。
- 業務性の強い行事:上司の指示による接待、会議名目の会食、旅行中の研修プログラム → 労働時間性が強い。
労働時間と認められる効果
賃金支払義務が生じ、法定労働時間を超えれば割増賃金(労基法37条)、22時以降は深夜割増も必要です。会費徴収型の強制飲み会は、理屈上はむしろ会社が賃金を払うべき時間です。
労災の認定
宴会・運動会等の行事は原則として業務ではありませんが、①参加が強制されている(事業運営に緊密に関連し出席が要請されている)か、②運営・接待等の職務を担当している場合は、その間の災害が業務災害と認められ得ます。幹事が会場準備中に負傷した例、参加を命じられた旅行中の事故などで認定例があります。判断は微妙なので、まず労基署に申請しましょう。
「不参加で低査定」は違法か
自由参加が前提の行事について、不参加を理由とする不利益査定や嫌がらせは、人事権濫用やパワハラ(労働施策総合推進法30条の2)に当たり得ます。宗教・健康上の理由(飲酒不可等)には一層の配慮が必要です。飲酒の強要はアルコールハラスメントであり、急性アルコール中毒等の結果が生じれば刑事・民事責任の問題になります。
実務アドバイス
- 幹事・接待を命じられた飲み会は、指示の記録(メッセージ・分担表)を残す——残業代と労災双方の証拠です。
- 自由参加の行事は明確に断ってよく、それで不利益を受けたら記録して相談を。
※ 本記事は一般的な法律情報であり、個別の案件に対する法的助言ではありません。実際の案件については必ず弁護士にご相談ください。本記事の内容は記事作成日(2025-08-07)時点の法令・判例に基づくものであり、その後の法改正等により変わることがあります。