レジの金・倉庫の商品が消えた——窃盗・業務上横領・背任はどう違う
2026-05-02
5秒でわかる結論
窃盗・業務上横領・背任の区別を解説。占有の所在による区別(自己保管=業務上横領253条10年以下/会社占有=窃盗235条/権限濫用=背任247条)、役員の特別背任罪(会社法960条・10年以下もしくは1,000万円以下併科)、立証の方向の違い(帳簿・カメラ・決裁記録)、証拠先行→自認書→公正証書・仮差押え→懲戒→告訴の対応順序まで。
レジの現金が合わない、倉庫の商品が消える、経理が公金を私的流用。いずれも「従業員が会社の財物を取る」行為ですが、罪名は誰がその財物を占有・管理していたかで分かれます。
3つの罪名の区別
- 業務上横領罪(刑法253条・10年以下の拘禁刑):業務上自己が保管・管理する他人の物の領得。レジ担当が自分の管理するレジ金を抜く、経理が管理口座から私的送金する類型。
- 窃盗罪(刑法235条・10年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金):会社の占有下にある財物の持ち出し。一般従業員が倉庫から商品を持ち出す類型(保管権限がないため横領ではない)。
- 背任罪(刑法247条・5年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金):事務処理者が図利加害目的で任務に背き会社に財産上の損害を与える。キックバック目的の高値発注、担保不足の貸付が典型。役員なら特別背任罪(会社法960条・10年以下の拘禁刑もしくは1,000万円以下の罰金、併科あり)。
区別の実益は「証拠の方向」
告訴状の罪名は捜査機関が再構成するので決定的ではありません。重要なのは立証の方向です。横領=保管権限+領得(帳簿・送金記録)、窃盗=持出行為(カメラ・入出庫記録)、背任=任務違背+図利目的+損害(決裁記録・市価対比)。背任の立証が最も難しく、横領で構成できるものは横領で整理するのが実務です。
会社の対応順序
- 証拠先行:帳簿・カメラ・ログを固定してから面談(先に問い質すと証拠が消える)
- 本人面談:自認したらその場で自認書(日付・金額・方法・署名)
- 民事回収:返還合意の公正証書化、必要なら仮差押え
- 懲戒:金額・期間・地位・返還状況で量定。懲戒解雇でも弁明手続は必要
- 刑事告訴:告訴するかは経営判断。「返還と引換えに告訴しない」という合意は適法な交渉の選択肢
※ 本記事は一般的な法律情報であり、個別の案件に対する法的助言ではありません。実際の案件については必ず弁護士にご相談ください。本記事の内容は記事作成日(2026-05-02)時点の法令・判例に基づくものであり、その後の法改正等により変わることがあります。