社員の横領が発覚——初日にやるべきこと・やってはいけないこと
2026-03-26
5秒でわかる結論
社員の横領が発覚した初日にやるべきは証拠保全。感情的な即日解雇が最悪手です。自宅待機→調査→処分→回収→刑事告訴の正しい順序。
帳簿が合わない。調べると古参社員の長年の横領——この種の事案は順序で成否が決まります。
初日:証拠の保全
- 帳簿・伝票・銀行記録・メールを複製して保全。
- 本人のアクセス権は停止しつつ、気取られる動きは避ける。
- この段階で本人を問い詰めない(証拠固定前の追及は隠滅を招くだけ)。
自宅待機命令→事実調査→本人ヒアリング
証拠が固まったら自宅待機命令(業務命令・原則賃金支払い)で帳簿から切り離し、金額・期間・手口・共犯の有無を調査。最後に本人へのヒアリングで証拠を示し、回答を記録し、可能なら金額・手口・弁済意思を記載した書面(承認書)を取得します。
処分と回収
- 懲戒解雇:典型的事由ですが、就業規則上の根拠と弁明の機会は必須。
- 退職金の不支給:不支給規定があっても、裁判例は長年の功労を抹消するほどの著しい背信行為を求める傾向です(三晃社事件・最判昭和52年8月9日労働経済判例速報958号25頁参照)。
- 支給済み退職金:退職後に発覚した場合、就業規則に返還規定があれば不当利得(民法703条)による返還請求を認めた裁判例があります(福井新聞社事件・福井地判昭和62年6月19日労働判例503号83頁)。
- 損害賠償:本人への請求(民法709条)に加え、身元保証人への請求も検討(身元保証法)。
- 刑事告訴:業務上横領罪。民事回収との兼ね合いでタイミングを設計します。
一番やってはいけないこと
感情的なその場での解雇です。証拠不十分の懲戒解雇が無効とされれば、横領した社員が「解雇無効」を手に戻ってくる——実際に起きる悪夢です。
※ 本記事は一般的な法律情報であり、個別の案件に対する法的助言ではありません。実際の案件については必ず弁護士にご相談ください。本記事の内容は記事作成日(2026-03-26)時点の法令・判例に基づくものであり、その後の法改正等により変わることがあります。