「追い出し部屋」の違法性——仕事を与えない配転は権利濫用
2026-05-05
5秒でわかる結論
「追い出し部屋」の違法性を解説。配転命令権濫用の枠組み(東亜ペイント事件・最二小判昭和61年7月14日労判477号6頁)、退職勧奨拒否後の出向命令を無効としたリコー事件(東京地判平成25年11月12日労判1085号19頁)、パワハラ「過小な要求」該当、退職届を書かない重要性、会社側の三重リスクまで。
退職勧奨を拒否した後、実質的な仕事のない部署へ配転する「追い出し部屋」は、権利濫用として違法となる可能性が高い手法です。
配転命令の限界
- 配転命令権は、①業務上の必要性がない②不当な動機・目的による③通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせる、のいずれかに当たれば権利濫用として無効です(東亜ペイント事件・最二小判昭和61年7月14日労判477号6頁)。
- 「居づらくさせて自分から辞めさせる」目的は典型的な不当な動機・目的であり、実質業務のない部署への異動は業務上の必要性自体を欠きます。
裁判例
- リコー事件(東京地判平成25年11月12日労判1085号19頁)は、退職勧奨を拒否した技術者への子会社出向命令(単純作業への従事)を、退職に追い込む目的の権利濫用として無効としました。退職勧奨拒否「後」の異動は、時系列自体が不当目的の有力な証拠になります。
ハラスメント該当性
- 能力・経験とかけ離れた程度の低い仕事しか与えない・仕事を与えないことは、パワハラ6類型の「過小な要求」に該当します(労働施策総合推進法30条の2・厚労省指針)。長期の隔離により精神疾患を発病すれば安全配慮義務違反(労契法5条)の問題も生じます。
労働者側はこう反撃してくる
- 労働者側の証拠収集は定型化しています:異動前後の業務内容の対比(メール・業務日誌)、退職勧奨の記録(録音を含む)、異動の時期(勧奨拒否直後なら時系列自体が不当目的の立証)、同部署の他のメンバーの状況(拒否者ばかりなら組織性の立証)。請求も配転無効確認・地位確認+慰謝料が定型です。そして労働者側代理人は必ず「退職届を書かない」よう指導します——本人が音を上げて辞めるのを待つシナリオは、代理人が就いた事案ではまず実現せず、違法状態だけが累積します。
会社側のリスク
- 「解雇ではなく異動」は安全に見えて、敗訴時は配転無効+慰謝料+(発病時)高額賠償の三重リスクです。人員過剰への正道は整理解雇4要素の検討か条件の合理的な退職勧奨です。
※ 本記事は一般的な法律情報であり、個別の案件に対する法的助言ではありません。実際の案件については必ず弁護士にご相談ください。本記事の内容は記事作成日(2026-05-05)時点の法令・判例に基づくものであり、その後の法改正等により変わることがあります。