「取締役」の肩書を付ければ残業代は不要か——名ばかり取締役の労働者性
2026-07-16
5秒でわかる結論
「取締役」の肩書を付けても実態が労働者なら労働法が適用され、残業代・解雇規制の対象になる。名ばかり取締役の判断基準と、本当に役員にする場合の手続。
「取締役に昇格させれば残業代を払わなくてよい」——中小企業でよく見る発想ですが、法律上は肩書ではなく実態で判断されます。
判断枠組み:労働者性は実態で決まる
労基法9条の「労働者」は、使用され賃金を支払われる者。該当性は名称でなく実態で判断されます。
- 業務執行の実質的権限があるか(取締役会に出席し経営判断に関与しているか、肩書だけか)。
- 働き方に指揮命令・勤怠管理があるか(始業終業を管理され休暇に承認が必要=労働者方向)。
- 報酬の性質(従業員時代と連続する「給料」か、業績連動の役員報酬か)。
- 登記上取締役でも部長等の職務を兼ねる「使用人兼務役員」は、従業員部分に当然労働法が適用されます。
労働者と認定された場合の帰結
- 残業代:役員就任後の分も支払義務。しかも「役員報酬」全体が算定基礎とされるおそれがあります。
- 解雇規制:形式は取締役の解任(会社法339条・株主総会決議)でも、実態が労働者なら関係終了には労働契約法16条のハードルがかかります。
- 労災・雇用保険:労働者性が認められる範囲で適用の可能性(兼務役員の従業員部分等)。
会社側の整理
- 本当に役員にするなら:退職手続(退職金清算)→株主総会選任→委任契約書→役員報酬の決定手続まで一式行い、勤怠管理から外す。
- 士気向上の肩書が目的なら:雇用型の「執行役員」等とし労働者性を維持したまま残業代を管理する。その場合も労基法41条2号の管理監督者該当性(名ばかり管理職問題)は別途の論点です。
※ 本記事は一般的な法律情報であり、個別の案件に対する法的助言ではありません。実際の案件については必ず弁護士にご相談ください。本記事の内容は記事作成日(2026-07-16)時点の法令・判例に基づくものであり、その後の法改正等により変わることがあります。