【古典判例】試用期間満了の本採用拒否=解雇——三菱樹脂事件(最大判昭和48年12月12日民集27巻11号1536頁)
2025-12-02
5秒でわかる結論
試用期間の本採用拒否は法的には解雇。三菱樹脂事件(最大判昭和48年12月12日民集27巻11号1536頁)が確立した解約権留保付労働契約の枠組みと、採用時に知り得なかった事実という限定。
「試用期間中だから合わなければ採らなくてよい」——日本の雇用で最も多い誤解の一つです。その誤解を正す原点が、50年間引用され続ける三菱樹脂事件(最大判昭和48年12月12日民集27巻11号1536頁)です。
事案の概要
大卒のXが将来の管理職要員として採用され、試用期間は3か月。期間満了直前に、会社は採用選考時に学生運動に関する経歴等の虚偽申告があったことを理由に本採用拒否を口頭で通告しました。Xは思想・信条を理由とする差別であるとして地位確認を求めて提訴しました。
最高裁の判断枠組み
- 採用の自由:企業は雇入れの段階では採用の自由を有し、思想・信条を理由に雇入れを拒否しても当然に違法ではなく、関連事項の調査・申告要求も違法でない(本判決のもう一つの有名な側面です)。
- 試用期間の法的性質:本件試用契約は解約権留保付労働契約——契約は入社時に成立しており、会社は「不適格と認めたときに解約できる権利」を留保しているにすぎない。
- 本採用拒否=解雇:したがって本採用拒否は雇入れの拒否ではなく、雇入れ後の解雇(留保解約権の行使)であり、通常の雇入れ拒否と同視できない。
- 行使の限界:留保解約権の行使には通常の解雇より「広い範囲における解雇の自由」が認められるが、採用決定当時知ることができず、知ることが期待できないような事実に基づき、解約権留保の趣旨・目的に照らして客観的に相当な場合に限られる(結論は破棄差戻し)。
経営者にとっての意味
- 試用期間は「いつでも別れられる期間」ではない。契約は成立済みで、打切りは解雇の基準で審査される——ハードルが通常の解雇よりやや低いだけ。
- 使える事由は原則として採用時に分からなかった事実:経歴詐称の発覚、試用中に初めて現れた勤務態度・協調性の問題など。面接時に知っていた事情を期間満了時に持ち出すのは基本的に通らない。
- 能力不足型の本採用拒否は、実務上は指導・教育の記録が求められる(当サイト「試用期間」の記事参照)。「何となく合わない」という主観的印象は裁判所では通用しない。
- 新卒の内定取消しも同じ枠組みで審査される(採用内定=始期付・解約権留保付労働契約。大日本印刷事件・最二小判昭和54年7月20日民集33巻5号582頁)。
※ 本記事は一般的な法律情報であり、個別の案件に対する法的助言ではありません。実際の案件については必ず弁護士にご相談ください。本記事の内容は記事作成日(2025-12-02)時点の法令・判例に基づくものであり、その後の法改正等により変わることがあります。