休職期間満了が迫っているのにまだ治らない——「満了=自然退職」の前に双方が知るべきこと
休職期間満了と自然退職を解説。私傷病休職=解雇猶予制度の原則(満了時未治癒なら自然退職・解雇)、「当初軽易業務なら程なく従前業務可」の例外(独立行政法人N事件・東京地判平成16年3月26日労判876号56頁、エール・フランス事件・東京地判昭和59年1月27日労判423号23頁)、満了前の通知実務・復職判定プロセスの記録化、従業員側の書面による復職申出と地位確認まで。
私傷病休職の期間満了が近いのに回復しきらない。就業規則には「期間満了時に復職できないときは自然退職」とある。会社はそのまま処理してよいか。従業員は受け入れるしかないのか。休職制度の紛争が最も集中する場面です。
原則——満了時未治癒なら自然退職・解雇
私傷病休職は解雇猶予の制度であり、満了時に従前の業務を通常の程度に行える健康状態(いわゆる「治癒」)に回復していなければ、就業規則の定めに従い自然退職または解雇事由となるのが原則で、裁判所も制度自体は適法と認めています。
例外——「程なく治癒する見込み」の診断書は無視できない
独立行政法人N事件(東京地判平成16年3月26日労判876号56頁)は、満了時に直ちに従前業務ができなくても、当初軽易な業務に就かせれば程なく従前業務を通常に行えると予測できる場合には、満了退職として扱えないという例外を示しました。エール・フランス事件(東京地判昭和59年1月27日労判423号23頁)も身体疾患の事案で同様の方向です。
満了直前に「当初は軽易業務なら復職可」との主治医診断書が出たら、会社は主治医面談(本人同意のうえ)・産業医意見・軽易業務の現実的な配置可能性の検討を尽くす必要があります。これを省いた退職扱いは無効とされ、バックペイのリスクを負います。
会社側の実務
- 満了日は事前に(実務上1〜2か月前に)通知し、満了=退職の規定と復職申請手続を明示する。
- 「復職可」「程なく復職可」の診断書が出たら必ず復職判定プロセスを回し、記録化する。
- 精神疾患では「程なく治癒」の医学的成立自体に争いがあり、専門医の意見がより重要になる。
従業員側の実務
- 満了日を自分で把握し、復職の意思は満了前に書面+診断書で明確に示す。
- 医学的資料を出さないままでは退職扱いが有効とされやすい。
- 退職扱いを争うなら労働審判等で地位確認を求める途がある。
※ 本記事は一般的な法律情報であり、個別の案件に対する法的助言ではありません。実際の案件については必ず弁護士にご相談ください。本記事の内容は記事作成日(2026-01-27)時点の法令・判例に基づくものであり、その後の法改正等により変わることがあります。