「協調性がない」社員への対応——抽象評価は無力、会社がやるべき4つのこと
「協調性がない」は印象であって事実ではない。①日付・場面・言動・影響への具体化②書面注意指導③改善機会と記録④配転検討——解雇は最終手段(労働契約法16条)。中途採用管理職の協調性欠如で試用期間中の解雇が有効とされた例:ヤマダコーポレーション事件(東京地判令和元年9月18日労経速2405号3頁)。
「誰とでも衝突する、会議のたびに揉める、周囲が疲弊している」——協調性不足は問題社員相談で最も多い類型の一つであり、同時に最も解雇理由に直結しにくい類型です。「協調性がない」はそれ自体では印象にすぎず、事実ではないからです。
1 「協調性がない」を具体的事実に翻訳する
裁判所が解雇の有効性で見るのは具体的事実です。「協調性不足」は次のように分解します:
- いつの会議で、同僚Aに対しどのような言葉を使ったか
- どの業務上の協働指示を拒否し、どのような結果が生じたか
- 取引先・部下からどのような具体的苦情があったか
日付・場面・言動・影響。この形式で書けるものだけが証拠になります。
2 書面による注意・指導
口頭注意は痕跡が残りません。注意書・指導書の形式で、具体的事実+就業規則の根拠+求める改善行動+期限を記載し、本人に交付して交付記録を残します(受領拒否の場合はその経過を記録すれば足ります)。
3 改善機会を与え、結果を記録する
指導後に本人がどう反応し、行動が変わったかをその都度記録します。「指導→改善なし→再指導→なお改善なし」のサイクルが、その後のあらゆる処分(懲戒・解雇)の共通の土台になります。
4 配転等の解雇回避措置を検討する
解雇には客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性が必要で(労働契約法16条)、裁判所は「他部署では無理だったのか」を問います。他方、中途採用の管理職では部下・取引先との正常な協働自体が中核的職責であり、試用期間中の協調性欠如を理由とする解雇が有効とされた例もあります(ヤマダコーポレーション事件・東京地判令和元年9月18日労経速2405号3頁)。ポジションの期待水準が明確なほど会社の主張は通りやすくなります。
協調性問題は長期戦です。最初の苦情の時点から記録を始めることが、将来のすべての選択肢の前提になります。
※ 本記事は一般的な法律情報であり、個別の案件に対する法的助言ではありません。実際の案件については必ず弁護士にご相談ください。本記事の内容は記事作成日(2026-08-03)時点の法令・判例に基づくものであり、その後の法改正等により変わることがあります。