解雇と退職勧奨の使い分け——別れたいときは、先に話してから切る
2026-01-03
5秒でわかる結論
解雇と退職勧奨の使い分けを解説。解雇の高いハードル(労契法16条)と敗訴時のバックペイ、退職勧奨の自由と限界(下関商業高校事件・最一小判昭55.7.10労判345号20頁)、先に勧奨・条件提示→不成立なら解雇検討という順序、面談の進め方まで。
ある従業員に辞めてもらいたい。選択肢は二つ、会社が一方的に行う解雇と、本人の同意を得て辞めてもらう退職勧奨(合意退職)です。順序を誤ると、代償がまったく違ってきます。
解雇のリスク
労働契約法16条により、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない解雇は無効です。日本の解雇のハードルは非常に高く、能力不足・勤務態度不良を理由とする解雇は訴訟で否定されることが多いのが実情です。敗訴の効果は復職+解雇日からのバックペイ(2〜3年分になることも)です。
退職勧奨は自由——ただし限界がある
勧奨自体は「退職を考えてほしい」と伝える事実行為で、原則自由です。しかし——
- 本人が明確に拒否した後も執拗に繰り返す、長時間・多人数の面談、侮辱的な言辞は違法となります(下関商業高校事件・最一小判昭和55年7月10日労判345号20頁:拒否した職員への多数回の勧奨を違法とし、損害賠償を認めました)。
- 「辞めなければ解雇する」式の脅しは、後から退職合意の取消しを主張され、実質解雇と認定されるおそれもあります。
実務の順序
- まず勧奨:会社の評価と理由を説明→条件を提示(退職金の上乗せ・年休の処理・離職理由の扱い)→考慮期間を与える。
- 面談は1回30分〜1時間程度・会社側2名以内・記録を残す。拒否された後は原則として同じ面談を繰り返さない。
- 合意成立→退職合意書(退職日・支払条件・清算条項)。
- 不成立→そこで初めて解雇を検討。勧奨段階で整理した事実・記録(指導記録・改善機会の付与)が解雇の有効性の証拠になります。
条件設計の現実
特別退職金の相場は事案により幅がありますが、給与数か月分の上乗せが一般的な出発点です。解雇敗訴時のバックペイのリスクを考えれば、「数か月分多く払って確実な合意を得る」ほうが経済合理的なことが多いといえます。
※ 本記事は一般的な法律情報であり、個別の案件に対する法的助言ではありません。実際の案件については必ず弁護士にご相談ください。本記事の内容は記事作成日(2026-01-03)時点の法令・判例に基づくものであり、その後の法改正等により変わることがあります。