【裁判例紹介】試用期間中の解雇が有効とされた例——日本基礎技術事件(大阪高判平成24年2月10日労判1045号5頁)
2026-06-22
5秒でわかる結論
試用期間中の解雇が有効とされた例。日本基礎技術事件(大阪高判平成24年2月10日労判1045号5頁)——現場での危険行為と度重なる指示違反、再三の指導でも改善なし。分水嶺は事由の重大性+指導記録。
当サイトでは三菱樹脂事件やニュース証券事件など「試用期間の解雇は簡単ではない」という判例を紹介してきました。では、どのような場合に有効と認められるのか。代表例の一つが日本基礎技術事件(大阪高判平成24年2月10日労判1045号5頁)です。
事案の概要
Yは地質調査・地盤改良工事の会社で、Xは新卒の技術社員として入社し、試用期間中に工事現場で研修を受けていました。Xは現場で安全を脅かす行動や上司の指示に従わない言動を繰り返し、会社が再三注意・指導しても改善しなかったため、Yは試用期間中に社員適格性の欠如を理由に解雇。Xがこれを争いました。
裁判所の判断
- 試用期間中の留保解約権の行使は、三菱樹脂事件の枠組み——採用時に知り得なかった事実に基づくか、客観的に合理的で社会通念上相当か——で審査される。
- 本件のXの問題は単なる「能力不足」ではなく、工事現場の安全に関わる危険な行動と度重なる指示違反。安全が生命線の建設・地質調査業では、社員としての適格性に直結する。
- 会社は再三の注意・指導を尽くしても改善がなかったのであり、使用者として尽くすべき努力を尽くした——解雇は有効とされました。
経営者への教訓
- 有効例と無効例の分水嶺:①事由の重大性(安全問題・反復する指示違反>単なる成績不振)②指導・改善機会の記録の有無③採用時に判明し得なかった事実かどうか。
- 「指導しても直らなかった」を証拠で語れるようにする:いつ・誰が・どの行為について・どう指導し・本人がどう反応したか。日報・指導記録票・メールで足ります。
- 危険行為型は記録が比較的容易(発生事実が客観的)。能力不足型はより長期・体系的な指導記録が必要です(セガ・エンタープライゼス事件・東京地決平成11年10月15日労判770号34頁、ブルームバーグ事件・東京高判平成25年4月24日労判1074号75頁参照)。
- 注意:試用期間途中の解雇は満了時より原則として難しい(ニュース証券事件)。本件は「問題が重大で観察を続ける意味がない」類型であり、安易に自社の事案を当てはめないこと。
※ 本記事は一般的な法律情報であり、個別の案件に対する法的助言ではありません。実際の案件については必ず弁護士にご相談ください。本記事の内容は記事作成日(2026-06-22)時点の法令・判例に基づくものであり、その後の法改正等により変わることがあります。