能力不足なら解雇できる?——PIP(業務改善プログラム)の正しい使い方・誤った使い方
2025-09-15
5秒でわかる結論
能力不足解雇の有効性は「改善の機会を与えたか」で決まり、PIP(業務改善計画)はその標準手段です。しかし達成不能な目標設定や退職強要の道具としてのPIPは、逆に解雇無効・違法な退職勧奨の証拠になります。正しい設計を解説。
「彼は能力が足りない」——それが事実でも、いきなりの解雇は日本ではほぼ敗訴します。裁判所が問うのは:会社は改善の機会を与えたか?
能力不足解雇に対する裁判所の視点
解雇には客観的合理的理由と社会的相当性が必要です(労働契約法16条)。能力不足型の解雇で裁判例が繰り返し要求するのは:①能力不足の具体的事実(印象ではなく)②指導・改善機会の付与③配置転換等の解雇回避努力④それでも改善の見込みがないこと。中途採用の高度専門職(職務限定)では基準が緩和されますが、一般の正社員でのハードルは高いものです。
PIPの正しい設計
- 目標は具体的かつ達成可能に:「営業意識の向上」では駄目で、「3か月で新規訪問○件・受注○万円」など測定可能な目標を。達成水準は同職位の平均程度に——エース級を超える目標を課すと、訴訟で「失敗させるためのPIP」と認定されます。
- 支援策:目標だけ与えて支援(研修・上司の定期面談・同行)のないPIPは単なる放置です。
- 期間:一般に3〜6か月。2週間の「PIP」は改善機会として扱われません。
- 記録:毎回の面談記録(日付・内容・本人の発言)・中間評価を書面化し本人に交付。訴訟ではこの紙の束が勝敗を分けます。
誤った使い方=退職強要の道具
- PIP未達成→即解雇は不可——未達成後も配置転換・降格などより軽い手段の検討が必要です。
- PIP期間中に長時間の面談を繰り返し「達成できないなら自分から辞めたら」と圧力をかける——違法な退職勧奨(不法行為)となり、PIP全体が退職強要の手段と評価されます。
- 外国人社員への適用:目標・評価基準の言語の壁に配慮を——本人が十分理解できない日本語文書でPIPを進めると、手続的相当性が否定されるリスクがあります。
従業員側(PIPを課されたら)
PIPは解雇予告ではありません——冷静に対応を:目標が不合理なら書面で意見・調整を求める、面談記録は自分でも残す、面談の圧力の中で退職届にサインしない。PIP後の解雇・退職勧奨はいずれも争う余地があります。
※ 本記事は一般的な法律情報であり、個別の案件に対する法的助言ではありません。実際の案件については必ず弁護士にご相談ください。本記事の内容は記事作成日(2025-09-15)時点の法令・判例に基づくものであり、その後の法改正等により変わることがあります。